(説明割愛)
絶対使う要素:教会・王・護衛・みなしご・別れる・救われる(順不同)
結末:敵は死に、そしてついに彼らは結ばれました。

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──その【教会】は、城下では一番大きな建物でした。神の座す城とも呼ばれる荘厳な建物は、古くから人々に親しまれ、愛されていました。
しかし、ある頃から不思議な言い伝えが広まるようになりました。
皆が寝静まった、午前三時。足音を殺して教会の裏口をくぐると、無人のはずの教会に火が灯り、懺悔室の扉が招くように開いているというのです。
人々に広く親しまれる神とは一線を画す、『罪人たちのための神』が、そこに顕れるのだそう。
人には言えぬ罪を抱いた者は、その時間に教会へ赴き、懺悔を行う。
すると哀れに思った彼らの神が、その罪人の『願い』を聞き届けてくれる。
──信じるものは、【救われる】。
願いを聞く神が発したと言われる成就の言葉は、いつしか咎人たちの合言葉となり、秘密の集まりや悪事の合図となってゆきました。
さて、近頃城下では不穏な噂が飛び交っていました。
お尋ね者や悪人たちが、次々と姿を消しているというのです。
我が物顔の盗人も、街を汚す浮浪者も、少しずつ数を減らしています。
市井のものたちは無邪気に喜び、安泰な治世を褒め称えていました。
時を遡ること幾月。
城下を外れた裏通りそのまた外れ。誰も近づきたがらない貧民街のすぐ側に、街を騒がす悪の元締めが隠れ家を構えていました。
そこでは二人の【みなしご】が育てられていました。
幼い頃に引き取られた少年と少女は、スリや窃盗の見張り、詐欺の片棒まで、あらゆる悪事を強いられていました。
少年は器用に仕事をこなしましたが、少女は失敗ばかり。そのたびに食事を抜かれ、寝床を奪われ、ついには病を患ってしまいました。
少年は自分の食事を分け、夜には少女を温めました。
「いつか、二人でここを出よう。僕が君を守るから」
「ありがとう。わたしも強くなる。強くなって、今度はわたしが君を助けるの」
そうして二人で肩を寄せ合い、笑うのでした。
こんな場所でも、彼女と一緒なら耐えられる。ここを出るんだ。いつか必ず。
そのためなら、どんな罪でも犯そう。
*
月を雲が覆い隠す、暗い暗い夜のことでした。
盗みがうまくいかず、苛立っていた元締めは、目についた少女を殴りつけました。
「役立たずめ! 俺の憂さを晴らすくらいしか価値がねえ!」
少年は必死に止めましたが、大人の力には敵いません。
男がようやく手を止めたとき、少女は床に倒れ、かすかに息をするばかりでした。
「……死なないで」
少年は少女を抱え、怒鳴る男を振り切って逃げ出しました。
手下たちが追ってきます。
腕の中の少女は軽く、今にも消えてしまうのではないかとさえ思えました。
少年は無我夢中で走りました。彼女を絶対に離さぬよう、必死に抱き締めて。
灯もない真っ暗な街の中、雲間からわずかに道を照らす月明かりだけが頼りでした。
そうしてついに辿り着いたのは、大きな教会でした。
追っ手の声が迫ります。少年は隠れようと、足音を殺して裏口をくぐりました。
その途端、誰もいないはずの聖堂に火が灯りました。
懺悔室の扉が、少年たちを招くかのように開かれています。
少年は思い出しました。午前三時、咎人たちの願いを聞く神が現れるという、あの噂を。
ああ。じゃあ、僕らは咎人なんだ。
盗みもした。人も騙した。でも、それで彼女を救えるなら、罪人でよかった。
少年は少女を抱いたまま懺悔室に入り、震える声で罪を告白し、祈りました。
「神様。どうか、僕たちを助けて」
すると、聖堂に灯る火の全てが腕の中の少女へと集まり、その体が眩い光を放ちはじめます。
少年は思わず目を瞑りました。
やがて腕の中に身じろぐ気配を感じた少年が瞼を開いた時、淡く光を纏った少女が、彼の知らない声で告げました。
「追手が迫っている。我がお前の【護衛】となろう」
少女の中の護衛は自らを天使と名乗りました。
天使は、少年が育て親と【別れる】のを、ずっと隣で待っていたと言うのです。
悪しき者に育てられても、決して悪に染まることのない清き正義の心。
「僕が正義だって? 僕はあいつの元でどれだけ悪いことをしてきたか、神様は見てなかったのか?」
少年は、少女が殴られているときも、病を患った時も、少女を連れて逃げなかったことを悔やんでいました。敵わないの一点だけを言い訳に、命じられるがままに悪事を働きました。恥じても悔いても、その事実は消えないのです。
「それならば、人々を救いなさい。この国は今、生きるために悪事を働かなければならないほど乱れている。悔いているなら、お前が救いなさい。私がお前を守る。」
そうして少年は、協会に祈りに来る人々の懺悔をききはじめたのです。
午前3時、誰にも言えない後悔を抱えた罪人がやってきました。
「罪を悔いているのなら、人々を救いなさい。人が罪を犯さなくても、生きていけるように。」
「私にそれができるでしょうか。」
──信じるものは、救われる
合言葉を胸に、一人また一人と罪人たちは教会へ集いました。
さて、城下から罪人が消えて、困ったのは元締めです。手下がいなくなると大きな仕事ができなくなってしまいます。とうとう元締めは【王】に賄賂を払えなくなり、捕らえられました。
しかし城下に安泰が訪れたのはつかの間のこと、王に賄賂を払って悪事を働いていたのは、元締めだけではなかったのです。
「このままではいけない。」
教会にに集った元罪人たちは、結束を固め、悪を認める王に立ち向かったのです。
少年は王に、天使は騎士に。長い長い戦争の果て、敵は死に、そしてついに彼らの想いは結ばれました。
